みかづきの色々

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ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/死霊創世記を観た感想

久しぶりにロメロの『ゾンビ』を見たので、そのロメロ純正のゾンビ作品をゲットして見た。

当然、以下はネタバレです。

良かった点

ゾンビパニックで最も恐ろしいのはゾンビでなく人間──。
ロメロの描くゾンビものはこのあたりをガッチリ突いてくるのが好きですね……。
ただし、スカッとする内容でないのはやっぱり仕方のないところ。
だって、一番信用できないのが人間なのだから。

本作の主人公は、70年代作品だった『ゾンビ』のヒロインとはだいぶ内容が違ってますが、面白いと思うところが一つ。
物語のスタート時点では、彼女はむしろメンヘラぎみなくらいに弱い女性なんですね。
どれくらい弱いかって、母親のお墓参りに行くのに身内の……しかし決して好ましいとはいえないような男性に頼り切りで運転してもらって来ている。
確かに、旅慣れてもない普通の人間が長距離運転をひとりでするのはいい事じゃないけど……人の良し悪しはともかくお墓参りに連れてくる人間じゃないんだが。
おそらく来る途中にも文句を言われどおしだったんだと思うけど……こんなやつに運転させるくらいなら、どうして自分で転がして来なかったのか大いに疑問なんだけど……まぁそのへんは個人的事情なのか、それとも古典的ヒロインなのか。
ヒロイン自身もイラッと来ているようだけど、自分で運転してこなかった時点で自業自得だよなーっと思ってるうちに事件が起きる。つまり、墓参にきたのではなく、葬りにきた故人に襲われた被害者と思われるやつに襲われるわけだけど。
ここでヒロインは完全にパニックを起こして近くの民家に助けを求めまくるんだけど……あきらかにおかしい状態の民家に普通に入って行っちゃったり、すでに判断力その他がおかしくなってる。で、それを助けてくれるのが逃げ込んできた黒人男性のベンなんだけど。

ここからが、ああなるほどという状況になっていくんですよね。

ベンに諭されて腰をすえ、覚悟を決めたヒロインが次第に強い女性に変貌していきます。
でも彼女と対象的に、ベンたちの方はゾンビへの対処方法を巡って衝突し始め、お互いの足を引っ張りだすんですよね。
そして、両者に翻弄されつつも、あさっての方向におかしい行動をとって自爆していくトムとジュディのカップル。
みんな、妙なこだわりとか物欲とか、いろんなものに踊らされているのが見え見え。
目覚めたばかりのヒロインは強く出られないから彼らに対して押しきれず、結果として一緒に籠城戦する羽目になって、無意味に苦労したあげくにみんな死んでしまう。

この「人間側の問題で無意味に人が死ぬ」あたりが、なんともゾンビ映画の真骨頂なところ。
これ「ゾンビ」でもありますけど、ショッピングセンターという目立つ構造物がないだけ、露骨に現れてますな。

所感

ひとことでいうと、なんつーか、凄まじく醜いなと。

本作の場合、ヒロインが覚醒していくさまが面白い。
最初のブザマを通り越して「終わってる」状態が、腹をすえてからどんどん変わっていく。
スカートからズボンに履き替え、男物のジャケットに着替えて何も言われずとも武装するようになっていく。
そしてベンたちが争っている横で冷静にゾンビたちを観察し、かなり早い時期から、籠城はダメであると判断、ゾンビたちが早くない事から徒歩による脱出を進言している。

何よりゾンビたちは次から次へと明かりのついてる家を目指してくるわけで、地下だろうと上だろうと家にいたのでは何もかも心もとないのはわかりきってるわけで、ヒロインの考えは正しい。
それこそ、もっと安全に籠城できる場所に移動でもいいから、とにかくゾンビだらけの一軒家なんて場所に居続けるのはまずいと考える。

だけど、そんなヒロインに対し、ベンは車による移動に執拗なまでにこだわり、ヒロインの提案を徹底して蹴り続ける。
それは、遠くないところに放送局があって稼働しているという確かな情報をえてもなお変わらない。
そしてさらに、地下室籠城にこだわるハリーとぶつかってどんどん不利になっていき……そして地獄を見る。
で、結果的にヒロインひとりで地獄を見ながら脱出する羽目になるわけだけど。

いくらなんでも、足の引き合いすぎだろと思う。

ひとりで脱出して地獄を見て……そして、そのおそろしいゾンビよりも醜い人間たちを見て「ああ」と納得したヒロインにはもう、最初のブザマな女の面影はなくなっていた。
サスペリア」のヒロインであるスージー・バニヨンみたいな、爽やかに生き残った感は本作には全くない。

むしろ「これからどうなるのよ」という不安の中に終わるあたりもまた。

気になった部分

イラッとくるやつがたくさん出て来るので、気の短いひとは気をつけて。
人間同士で足の引き合いが起きるのはお約束だろうけど、それにしてもこれはひどい