はっはぁ、すんげーもん読んじゃったわ。
これ、要は寄生獣の二次創作を集めてる本なんだけど。
以下が特に素晴らしかった。
・由良の門を
田村先生の残した子供の話。
なんと萩尾望都によるものなんだけど、ものの見事に萩尾作品に消化されている。
これは素晴らしい。
この人が描くと泉新一ってこんな感じになるんだって驚かされたけど、主人公の心理描写も実に面白い。
謎の声や殺しに禁忌をもたない思考も、おそらくは胎児の時の影響なんだろうけど、なにしろあのお母様が「普通の人間」と判断していたレベルだから普通の人も気づくわけもない。それに当人が人間なのだからその影響は年代と共に、人生経験の中で消えていくんでしょうね。
でも、築かれた性質や生来の能力まで消えるわけではない。三つ子の魂は百までなのだ。
けど、こんな能書きなんかどうでもいいほどに、悩んだり考える主人公が素晴らしい。
寄生獣の作者さんが描いた、パラサイトという異生物と深く関わったがゆえの異質な部分まできちんと、きれいに描ききっている。さすがと言わざるをえない。
そして、能の演目にも興味をもってしまった。
・今夜もEat It
人間食をやめて普通に生きるパラサイト男性の話。
地味だけど自炊派で健康第一の女の子が気に入り賞賛し、結婚までしちゃうっていうのがまた。子供にすら変人キモいと言われつつも嫁さんの良き理解者であり、家族の一員として生きようとしているあたりがまた。
しかも一家をきちんと繁栄させて……。
どうでもいいけど、一番大笑いしたのは「老けてないのはまずいか」と娘の言葉で気付かされた部分か。
けど主人公さん。
たぶんだけど奥さん、あんたが人間じゃないとわりと早期に気づいてたんじゃないか?
気づいた末に、でもあんたの性格やら何やらを理解して問題ないと思ったんじゃないかな。
この奥さんを主人公にした三次創作を書きたくなりましたよマジで。
「うちの旦那は人間じゃないらしい」みたいなタイトルで。
あと、この作者さんって本当に好きだなと思ったのは、なにげにちゃんと原作キャラ出てるんだぜ。
え、どこって?
主人公が奥さんにプロポーズした喫茶店ですよ。
なに、わからない?
ここ、田宮先生と新一がA事件の前にやらかした喫茶店だよ!ウエイトレスさんとマスターも原作と一緒だよ!
彼ら原作キャラだよ!
はははは……作者さんがファンならファンらしい行動だし、純粋に仕事だったならファン心理を掴みすぎだ。
すげー XD
・かわりもの
家族を得て自然生活をしている個体と、それを訊ねてきた個体の話。
これもなかなか。
・ミギーの旅
これもまた素晴らしい。
ミギーがどんな旅をしているんだろうって発想から出たんだろうけど、こういう世界観って好きですね。実に楽しませてもらいました。