ちょっとおもしろい、しかし気になる部分もある作品に遭遇しました。
[えっ!? 異世界ですか? 滅ぼしましたよ]
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なろうで、この作品を見まして。
おもしろいんですけど、同時にいろいろ考えさせられるものです。
興味深い。
まだ未完なので、今後が楽しみです。
まずちょっと説明。
これは異世界転移モノとしては面白い。
チーム単位の転移であり、某オーバーロードの二匹目のドジョウ狙いかなと思ったんだけど、一話で違うとわかった。
オバロの主人公がユニークなのは当人がギルドマスターという立場であり、これを転移後もつらぬく点が面白いのだけど、こちらはあくまで個人。
大人数に見えるけど、彼は常にひとり。
これはもっと古典的な、無頼転移モノの変型版といえるでしょう。
で、問題はここからなんですね。
作品としては面白いのだけど、ひとつだけ首をかしげる点があるのです。
すなわち。
仲間同士、まったく連絡をとらない、意思疎通をなおざりにし、重要な案件を報告しないのです。
どのくらいすごいかというと。
たとえば。
手分けして魔王城を探検していたら、いきなり勇者チームがやってきちゃった。
で、当然ながら勇者チーム来襲を上に報告にいくのですが。
なんと、主人公を巡るくだらない仲間うちの足の引き合いや雑談をはじめちゃって本題に全く入らず、そしてその勇者たちがやってきてしまった。
とんでもない大失態ですよね。
相手が強い弱い以前に、こんなん叱責じゃすまないです普通。
けど、これがまるで問題にされないのですね。
読んでいて「えええ?」と思ったのです。
ややこしい事になるかもしれない第三者の侵入なんて真っ先に報告すべきなのに、クソどうでもいい雑談に花を咲かせて全部パーにしたのもすごいけど、
それがほとんど問題視されてないっていうのが正直ありえない。
ただ。
読んでいるとわかるのですが、どうも主人公も同じなんですよね。
情報を一切共有しない。
連絡をとりあわず、重要な案件の報告もしない。
とにかく目の前の状況を見て自分で判断し、行動するだけ。
しまいには、協力をとりつけるはずの人間国家にモンスターをばらまいて大量の死者を出しておきながら、その事を問題にしていないし、問題になるとも考えていない行動。
いったいどうなってるのか?
しかし驚いたのですが、読んでいるとわかってくるのです。
彼らは結局、ひとりの人間と彼の作ったNPCなので問題点もすべて同じなんです。
だからこそ、こんなとんでもない大惨事を問題と気づけないのかもしれない。
すべてが個人ひとりの延長による弊害ってやつか。
ただ、三人称の話なので、報連相の欠如や身勝手なNPCの行動といった、あきらかに読み手が問題視するであろう部分は地の文で少し触れるべきじゃないかと思うんですけど、そういうとこにも全く触れないんですよね。そういうのが作品全体に溢れてます。
女性NPC同士の丁々発止には膨大なテキストをさくのに。
うーむ。
で。
誰も犠牲にしたくないとか言ってるそばで、後にこれらの事が原因で一気に非戦闘員100名を含む数百の犠牲を出し、しかもそれをまったく知らずにいて、全然関係ないことから偶然それを知る事になるんですが。
これもなんか「俺の責任だ」とひとりでどこまでも格調高く悩んだあげく、自分だけで判断して自分だけできめて暴走しだす主人公。
このあたりからそろそろ、ストーリーは時勢が混沌としてきます。
ただ理解しがたいだけでなく、なぜか主人公に都合よくすべてが進み出すわけで。
あーうん、アレに介入するのは壮大で結構なんですけど。
その前にまず組織改善、特に第三者視点の連絡網の構築をはからないとまずいでしょう。
根本的な原因がそのままじゃ、多少人物配置を変えてやり直しても意味はない。
おそらく多少の状況が変わるだけで、同じことを繰り返すだけと思うんですが?
うん。
考えさせられるという意味でも、いろいろとおもしろい作品です。
繰り返しになるが、作品としては面白いのです。
文体などにはきっとツッコみたい声もあるでしょうけど、そこは若さだと思う。
むしろ、なまじ面白いがゆえにこんな根っこの部分が気になってしまうって典型ですね。
まだ途上であり完結もしてないですし、今後の展開など楽しみにしています。
また。
自分も知らずにこういう事をやってしまっていないか、気をつける必要もありそうです。
そんなことを思った日曜午後でした。